コロナで資金繰りに悩んでいる中小企業は多いですが、金融機関との交渉が苦手で問題を先送りにしているケースがあります。度が過ぎると考える余裕をなくし経営の舵取りを誤ってしまいます。本事例は、財務面を中心に経営診断を行い、経営改善策を提案した事例です。
会社の状況
企業情報
業種 | 小売業 |
業歴 | 約20年 |
従業員数 | 約50名 |
売上高 | 約6億円 |
業況
当社は、コンビニ経営に早くから参入、多店舗展開をしており、フランチャイザーとも良好な関係を築いています。この20年でコンビニエンスストア市場は拡大しましたが、大手間の競争が激化し、当社もその影響を受けながら経営を続けてきました。借入金が増えるなかで現在の経営状況を見つめ直し、今後の見通しが立てたいと苦慮しています。
財務診断の内容
経営に対する考え方や将来の希望を中心に、以下を確認しました。
- 社長の創業時の想いや生い立ち
- この先どのような人生を送りたいのか
- ご家族、従業員への想い
- これまでの経営改善策、今考えている改善策
- 申告書10期分、試算表、商品別利益データ、賃金データ
- 店舗と周辺環境視察
経営悪化の原因(窮境要因)
- 経営環境変化に翻弄され、経営ではなく作業に追われてきた
- 売上重視の経営管理
- 薄利多売
- フランチャイザーへの手数料負担
- 震災、物価高騰、本部からの制約事項
収益構造のバランスが悪く、長年赤字体質となっています。経営がしんどくなってきたのは、2店舗目開店からと思われました。1店舗目の「赤字」をカバーするために、「売上に着目し」多店舗展開をしたからです。確かに売上規模は大きくなりますが、元々収益力が弱いため、忙しいわりに資金繰りが厳しい状況から抜け出せません。また、1店舗目周辺はライバルが多数出店し、商圏がどんどん狭まるため、売上が下がるのは必然です。その限られた商圏内で、如何に顧客を獲得し利益を出していくかを、先に考えるべきでした。
コンサルタントはここに着目しました
- 20年以上の業界経営経験がある
- 経営者に人の気持ちを察する力があり人望がある
- 頼れる若い従業員がいる
- 優秀な本部の経営管理システムがある
- 店舗ごとに良い面と悪い面を持ち合わせている
- 後継者がいる
提案内容
- 目標債務償還年数10年の経営改善計画策定
- 棚割り変更やセット販売を強化し粗利率を向上する
- 本部経営管理システムの商品別収益率を活用する
- SNSを活用した地域住民への情報発信
- 店舗間ノウハウ共有による運営レベルの向上
コンビニエンスストア経営は、ひと昔前と違い様々な制約があることをオーナーからよくお聞きします。その制約の中でいかに「個性」を出していくかが課題です。当社の場合、経営者の年齢や希望を考慮すると、あと10年で返済目途を立て、後継者にバトンタッチすべきと考えました。優先すべきは粗利率向上、そのためにはスタッフの力が必要です。経営者が経営に専念するために、店舗間の垣根をなくした運営体制を整えることを提言しました。